かもしてるっ!!ブログ

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10秒前まで殺意を覚えていた友人に惚れそうになった話

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『なぁ正男殺した犯人って、不細工な犬に似てねっ?』

 

 

彼はテレビを観ながら時折僕の部屋のドアを開けてどうでもいいことを叫ぶ。

 

 

彼の名はタカ。

 

 

学生時代から変わっていたが、それは今も変わらない。

 

 

僕は今、訳あって彼の家に居候している。

 

 

タカ

『なぁ金正恩ってあの髪型注意するやつそばに置いた方がよくねっ?』

 

 

僕は心の中で思う。

そんなこと知るかっ!つーかお前も暗殺されるぞ。

 

 

タカ 

『なぁなんで離婚するの?』

 

 

彼がドアを開けるたびに殺意のゲージが上がっていく。

彼はそんなことはおかまいなしだ。

 

相変わらずソファに寝そべってビールを飲みながら鼻くそをほじっている。

 

 

 

僕が危うく彼を暗殺しそうになったタイミングで彼の彼女が帰ってきた。

彼女の名前はフミちゃん。

 

 

フミちゃんは元気印な女の子だ。

料理も上手い。彼と彼女がひとつ屋根の下に生きていることが僕には理解できない。

 

 

そんなフミちゃんも今日はどこか元気がない。

会社でなにかあったのだろう。

 

サクッと作った夕飯を食べながらフミちゃんが切り出す。

 

 

 

フミ

『あたし、会社で嫌われてるかも・・・』

 

 

タカ

『おん?嫌われてるんじゃね?』

 

 

こいつはなんてことを言うのか、目の前のビールを頭から浴びせてやろうかと思った。

 

タカ

『嫌われてるかもって思うなら嫌われてるんじゃね?でも、お前も嫌いなやついるんじゃね?』

 

 

 

フミ

『そりゃあいるけど・・・』

 

 

 

タカ

『みんな嫌われてるし、嫌いなんだよ。そこにあんま意味ねーわ。』

 

 

彼はたまに哲学的なことを口走る。

 

 

確かにみんな嫌われているし、嫌っている。

 

 

タカ

『あんま気にすんなよ。っていうかどうでもいいべ。

 

俺が死ぬ程嫌いなアイツ。

 

彼が死ぬ程嫌いなアイツ。

 

そんなやつのことを好きだってやつもいる。

 

嫌いだし、好きだし。そんなもんだろ。』

 

 

フミ

『うん。』

 

 

タカ

『ありのままの自分を受け入れてくれる人もいるし、そうじゃないかもしれないし。まぁでもよ、自分がどんなに素晴らしい人になったとしたって、そんな自分を嫌いだって言う人はいるよ。まぁフミには帰ってくる家があるし。ここに敵はいないし。』

 

 

彼のこの男気はどこから来るのだろうか。

 

 

 

考えてみれば確かにそうだ。

双手をあげて大好きだなんて本当はないのかもしれない。

どんなに愛し合っている夫婦だって「旦那のいびきがうるさくて」と愚痴をこぼしてたりする。

 

100%の自分を受け入れてくれる場所はある意味で無いのかもしれない。

でも何%かの自分を受け入れてくれる場所ならあるはずだ。

それは僕にとってのこの家のように。

 

人は誰しも孤独を抱えて生きている。

その孤独を100%受け入れてくれる場所を見つけるのは難しい。

でも少しでも受け入れてくれる場所を見つけるのはそんなに難しいことではないのかもしれない。彼らを見ていてそう思った。

 

まだペラペラと喋っている彼を見ていると「嫌われるもよし。好かれるもよし。」そんな風に思えてきた。フミちゃんは笑っている。

 

そんな風にして彼らはこの家という居場所を2人で創ってきたのだろう。

 

 

タカ

アタリメ食う?』

 

 

『あ、うん。』

 

 

2人は台所に向かった。

ワイワイとアタリメを炙っている2人。

そんな2人を眺めながら、彼女が作ってくれたいいちこの水割りが美味いなと思った。

 

 

タカ

『俺は酒があってフミの愚痴があれば生きていけるなっ。ははっ!』

 

 

明日は僕が2人の為に何か料理を作ろう。